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研究ハイライト

プレスリリース:植物のストレスに対する応答を調節する3つの新規転写因子を発見

東京工業大学地球生命研究所(ELSI)の関本(佐々木)結子研究員らの論文がPlant Physiology誌に掲載されました。

ポイント

◆背景:高等植物は転写因子などの作用により、遺伝子発現のONとOFFを巧みに調節して外部からのストレスに適応

◆新規性:高等植物のストレスに対する応答を抑制する働きを持つ3つの転写因子を発見

◆今後の展望:植物が持つストレス応答機構を人為的に調節することが可能に

概要

東京工業大学地球生命研究所の関本(佐々木)結子研究員(前 日本学術振興会特別研究員・理化学研究所植物科学研究センター(当時))、理化学研究所環境資源科学研究センターの白須賢グループディレクターらは高等植物のストレス応答を抑制する3つの転写因子を発見した。モデル植物のシロイヌナズナの遺伝子発現データから、ストレス応答時に重要な働きをすると考えられる3つの転写因子を見出し、それらの機能が失われた植物体は過剰なストレス応答を示すことを明らかにした。

これら3つの転写因子はいずれも、一度ONになったストレス応答性遺伝子の発現を適切なタイミングでOFFにする働きを担っており、植物の通常の生育とストレス応答の両立のために重要であると考えられる。今回明らかになった転写因子を、詳細に解析することで、高等植物のストレス応答を適切に調節する仕組みの全容が分子レベルで明らかになることが期待される。

高等植物は、外部環境の変化や外敵からもたらされるストレスに適応するために必要な遺伝子のONとOFFを転写因子などの作用により巧みに制御しているが、これまでにストレス応答をOFFにする転写因子については知られていなかった。

この研究は東京工業大学バイオ研究基盤支援総合センター・太田啓之教授と増田真二准教授、東北大学大学院情報科学研究科・大林武准教授、理化学研究所環境資源科学研究センター・神谷勇治コーディネーターらと共同で行った。研究成果は米国科学雑誌「Plant Physiology(プラント・フィジオロジー)」September 2013, 163(1)に掲載される。同電子版は2013年7月12日から公開されている。

なお、本研究は、特別研究員奨励費と文部科学省の科学研究費補助金(基盤研究(S))を受け実施された。

発表雑誌

雑誌名:Plant Physiology

論文タイトル:bHLH transcription factors JA-ASSOCIATED MYC2-LIKE 1, JAM2 and JAM3 are negative regulators of jasmonate responses in Arabidopsis

著者:関本(佐々木)結子,軸丸裕介,大林武,斉藤 洸,増田真二,神谷勇治,太田啓之,白須賢

DOI番号:10.1104/pp.113.220129

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