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イベントレポート

一般講演会「起源への問い」を開催しました

2016年1月10日(日)、日本科学未来館未来館ホールにて、東京工業大学地球生命研究所(ELSI)と東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)との合同一般講演会を開催いたしました。

本講演会は、文部科学省世界トップレベル研究拠点プログラム研究拠点が合同で主催する初めての一般向けイベントであり、ELSIの廣瀬所長の提案により開催が決定いたしました。

まず、カブリ数物連携宇宙研究機構の村山斉機構長が「宇宙の起源と星の誕生」というタイトルで講演をしました。

0110a.jpgLiteBIRD計画について語る村上機構長

村山機構長は宇宙のはじまりとされているビッグバンやニュートリノ、暗黒物質について語り、ビッグバンの前に起こるインフレーションをLiteBIRDという計画で直接見てみたいと夢を語りました。
そして最後に、宇宙が複数個あったとして、たまたま条件の良い宇宙に地球があり、人類が生まれているのか、この宇宙の地球以外の惑星に生命はいるのだろうかという問いを投げかけ、観客の好奇心のバトンを廣瀬所長に渡しました。


続いて、地球生命研究所の廣瀬敬所長が「地球の起源と生命の起源」というタイトルで講演をしました。
廣瀬所長はこの宇宙の中で地球が誕生したであろうストーリーとして太陽の周りにあった塵が衝突を繰り返し原始惑星になり、原始惑星同士のジャイアントインパクトが起こり地球に月が誕生したという惑星形成の標準モデルや、地球の海の起源やスノーライン、ハビタブルゾーンについて語りました。

0110b.jpg地球の起源について語る廣瀬所長

そして一方で生命の起源の解明は惑星や地球の起源を解明するよりはるかに難しいとし、その理由として、現在発見されている惑星の情報は2,000近くあることに対して、地球上の生命は20種類のアミノ酸、4つのDNA塩基、共通の遺伝暗号表を用いているたった1種類しかいないため、普遍性や特異性が分かりにくいことをあげました。

その難しい状況の中で、ELSIでは、タンパク質がない状態で地球上にあった鉱物を触媒とし、原始の代謝反応(逆クエン酸回路の反応)が起き、その中でアミノ酸が合成された後に、タンパク質が合成され、最終的には鉱物ではなくタンパク質が触媒となっていたという仮説を立て、逆クエン酸回路は本当にタンパク質なしに成立するのか、二酸化マンガンのような触媒がどのようにしてタンパク質に置き換わるのかを実験室で明らかにしたいと展望を語りました。

休憩後は、東京大学共生のための国際哲学研究センターの梶谷真司センター長が「科学と世界観の系譜~人間の存在意義の歴史性~」というタイトルで講演をしました。

DSC_1477.JPGコペルニクスの地動説とダーウインの進化論について語る梶谷センター長

梶谷センター長はまず「科学が引き起こした世界観の革命」としてコペルニクスの地動説とダーウインの進化論の説明をしました。そして、宇宙の進化と生命の進化というようにダーウインの進化論は現在も尚議論されているとし、ダーウィニズムや適者生存、進化論が社会的に与える影響などについて語り、「宇宙になぜ生命が存在するのか」「人間が地球に存在するのは偶然なのか偶然ではないのか」「私たちはどういう存在でどこに行くのか」を観客に投げかけて講演は終わりました。

鼎談では、梶谷センター長がモデレーターを務め、この宇宙に地球という水と緑に恵まれた星が存在することや地球上に人間という知的な生命体が存在することは出来過ぎなのではないかと語り、「地球に生命が存在するのは偶然なのだろうか」と廣瀬所長、村山機構長に問いました。

0110d.jpg

村山機構長は自然定数や方程式を考えていると出来過ぎていると感じることもあると語り、廣瀬所長も海の割合や生命の誕生はとても低い確率で成り立ってるので出来過ぎてると感じると語りました。そして起源を解明するということは、われわれが宇宙の中でどれだけ特殊なのか、または普遍性があるのかを知る唯一の手段であると語り、鼎談は幕を閉じました。

鼎談後は、わずかな時間でしたが、講師を囲むティータイムが設けられました。

DSC_1757.JPG来場者からの質問に答える廣瀬所長

来場者から講師に対し1つ質問が出るとそれに対し他の来場者からも質問も出るという様子は日頃ELSIやIMPUで行われている研究者同士のディスカッションの様だという声が講師から上がりました。

本講演会は定員の300名を大幅に超える申し込みがあり、抽選となりました。ELSIとIPMUでは今後もこのような共同イベントを開催していく予定ですので、どうぞご期待ください。