地球と生命の起源と進化解明への新たな展開
―地球生命研究所が米財団からの研究資金をもとに研究者ネットワークを強化―
概要
東京工業大学地球生命研究所(所長:廣瀬敬、以下「ELSI」という。)は、文部科学省世界トップレベル研究拠点プログラム(通称WPI)の1拠点として、地球と生命の起源と進化の解明を目指しています。ELSIは、2012年12月の発足以来、地球惑星科学と生命科学の分野融合的な研究アプローチで、研究成果をあげています。
ELSIは、このたび、米国のジョン・テンプルトン財団(本部:米国ペンシルバニア、理事長:ヘザー・テンプルトン・ディル(Heather Templeton Dill)、以下「テンプルトン財団」という。)から、本年7月から2018年3月にかけて、総額5百50万ドル(約6億7千万円)の研究資金を獲得しました。この金額は、ELSIの年間予算の総額の約50%に相当します。ELSIは有力なグローバルファンドの獲得により、研究基盤の一層の強化を図り、地球と生命の起源と進化の解明の研究を加速することができます。
この資金をもとに、ELSIがハブとなり生命起源に関わる世界中の研究者同士をつなぐネットワークの強化と拡大を目的とする「EON(ELSI Origins Network)プロジェクト」を開始しました。EONプロジェクトの第一弾として8月26日から、国際ワークショップを開催します。
左からPiet Hutディレクター(EON)、廣瀬敬所長、三島良直学長(東京工業大学)、岩渕秀樹室長(文部科学省研究振興局基礎研究振興課基礎研究推進室)
EONプロジェクトについて
背景
ELSIが掲げる「地球と生命の起源と進化の解明」の中でも、生命の起源の分野は、生物学だけでなく化学や地球惑星科学など幅広い視点でのアプローチが必要不可欠であり、これまで世界中で様々な専門性を持った研究者が、生命の起源という共通課題の解明に向かって研究を進めていました。
一方で、必要なアプローチや専門性の多彩さゆえに研究者間・分野間の十分な連携が難しいことや、それにより研究コミュニティの規模が拡がりにくいことも認識されてきました。
ELSIは発足以来、地球と生命の起源と進化の解明をテーマとし、2014年度には幅広い分野の研究者が集う国際シンポジウムを1回、ワークショップ・セミナーを41回行うなど、コミュニティの拡大を目指し、ハブ拠点としてネットワーク形成に力を入れてきました。
EONプロジェクトとして新たな取り組み
こうした背景の中、ELSIはテンプルトン財団から約6億7千万円の研究資金を獲得し、その財源を使って、ネットワークをさらに強化・拡充するため、「EONプロジェクト」をスタートさせました。具体的な試みとして以下を行います。
・研究助成の支援(33か月で8件)
・研究員の国際公募と雇用(33か月で10名)
・国際ワークショップの開催(33か月で9回)
・招へいプログラム(33か月で約30名)
・交流掲示板のようなフォーラムページを備えたウェブサイトの構築
特に、研究助成の支援は新たな取り組みとして、総額約5千万円を投資するもので、世界中に眠る生命の起源の解明につながる研究の種の発見が期待されます。
EONプロジェクトの今後の予定
8月26日からEON国際ワークショップを開催します。このワークショップにはNASAの研究プロジェクト長はじめ国内外から36人が参加し、研究ロードマップについての議論を行います。
展望
ELSIでは、今回の資金とプロジェクトを礎とし外国からのファンド獲得を積極的に行う予定です。EONプロジェクトによって得られた成果は、ELSIの研究へと活かされ、人類の長年の謎である地球と生命の起源と進化の解明に向け、研究がさらに加速されることとなります。