去る6月12日に、"Creators Meet Scientists(CMS)" Projectの第2回目のワークショップがELSIホールにて開催された。
前回第1回(3月17日)は研究者からクリエイターへのプレゼンテーションだったが、今回は「クリエイターの側から研究者にメッセージを届ける」ことを目的とし、7名のクリエイターが自らの活動や作品を紹介したり、その奥に潜むものの考え方や、今回のコラボレーションプロジェクトについての思いなどを語ったりした。
辰野しずかさん(プロダクトデザイナー)
家具、生活用品、ファッション小物、商品企画・ディレクション、グラフィックデザインなどを幅広く手掛ける中で、良いモノづくりがもっと認知され、続いてほしいと願い、地場産業を支援する仕事に力を入れている。
現場に必ず足を運ぶというのがモットーであり、「長所を生かしていく、伝えていく、つなげていく」をテーマに制作活動に打ち込んでいる。良いものは、モノづくりの現場、という環境の中で生まれる、という認識に、生命の誕生という大イベントを生み出した原始地球の環境を探究するELSIの研究者と相通じるものを感じた。
オクダサトシさん(舞台表現、コンドルズ)
坪井浩尚さん(プロダクトデザイナー)
坂野充学さん(映像作家)
環ROYさん(ラッパー、音楽家)
普通に話を始めたかと思いきや、いつの間にかラップになっていて、しばし後に再び普通の会話に戻る、という語りのモードの変化に、聴衆は軽いめまいを覚えつつ引き込まれていた。語られる言葉も即興でありながら、音楽のルーツや本質を鋭く捉えるものであり、地球や生命の「起源を問う」というELSIの研究ミッションに共鳴する内容であった。
KYOTAROさん(ドローイングアーティスト)
浜田晶則さん(建築家、Aki Hamada Architects、チームラボ)
その後、全員で車座になって今後のプロジェクトの方向性について自由に意見交換を行った。
研究者とクリエイターの中には早くもコラボレーションのチームができ、メールで直接やり取りしたりして構想を具体化しつつあるメンバーもおり、前途が大いに期待される。
今回、極めて多様なジャンルの多岐にわたる話題が提供されたが、とりわけ今回のクリエイターからのメッセージにおいて重要だったコンセプトは、
1)起源を探る
2)普遍性への希求
3)日常的時間と空間の超越
の三つではなかったかと考える。これらは、ELSIの研究テーマとも密接に関係するコンセプトであり、単に表面的な「顔合わせ」ではなく、本質的なコラボレーションが生まれる可能性を確かに感じた一日であった。今後の展開が非常に楽しみである。