ELSI

ニュース・広報

研究ハイライト

初期火星の大気には酸素が豊富にあった?

37899_Curiosity_PIA18390.jpgNASAキュリオシティ探査車とマンガン酸化物が発見されたWindjanaドリルサイト(Image credit: NASA/JPL-Caltech/MSSS)

● 酸素分子は生命にとってエネルギー源となり、また生命活動(光合成)によっても生成されるため、地球外天体における生命生存可能性を理解する上で重要な分子である
●研究チームが行った実験により、NASA火星探査車が発見した太古の火星堆積物中のマンガン酸化物が、酸化的な環境でないとできない二酸化マンガンであることが明らかになった
●二酸化マンガンができるためには、初期火星の大気に酸素分子が含まれている必要があり、その量は酸素発生型光合成生物の誕生後の地球大気の酸素レベルにも匹敵する

NASAの火星探査車キュリオシティとオポチュニティは、太古の火星堆積物中にマンガンに富む脈を発見している。これまでの研究から、このマンガンが初期火星上の地下水中で酸化物として沈殿したことが明らかになっていたが、それが実現される酸化還元状態は不明であった。
本研究は、室内実験に基づきこのマンガン酸化物が二酸化マンガンであることを明らかにし、当時の火星の地下水環境が非常に酸化的であったことを示した。二酸化マンガンが形成するためには、高い酸素分圧が必要であり、そのレベルは地球上で酸素発生型光合成生物が誕生し、大気中に酸素が蓄積した後のレベルに匹敵する。酸素分子は、化学合成生物などにとってのエネルギー源となりえるため、火星における生命生存可能性を考える上でこの発見は重要な意義を持つ。

掲載誌 Journal of Geophysical Research - Planets
論文タイトル Highly oxidizing aqueous environments on early Mars inferred from scavenging pattern of trace metals on manganese oxides
著者 Natsumi Noda1,2*, Shoko Imamura1,2*, Yasuhito Sekine1,* †, Minako Kurisu2, Keisuke Fukushi3, Naoki Terada4, Soichiro Uesugi2, Chiya Numako5, Yoshio Takahashi2, Jens Hartmann6
*These authors equally contributed to this work.
Corresponding author.
所属 1Earth-Life Science Institute, Tokyo Institute of Technology
2Department of Earth and Planetary Science, University of Tokyo
3Institute of Nature and Environmental Technology, Kanazawa University
4Department of Geophysics, Tohoku University
5Graduate School of Science, Chiba University
6Institute for Geology, Center for Earth System Research and Sustainability, Universität Hamburg
DOI 10.1029/2018JE005892
出版日

2019年4月16日