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151 分子進化のメカニズムを表現する作品

地球環境の進化や生命の発生プロセスに関しては、まだまだ多くのことが分かっていませんが、分子の化学的な反応が重要な鍵を握っていることは、多くの研究が示唆しています。20世紀には、オパーリンやホールデンが生命は単純な分子から徐々に複雑な高分子へと進化したという考えを提唱し、ミラーはメタン、水素、アンモニア、水からアミノ酸の合成を行いました(ユーリー・ミラーの実験)。今日でも分子進化と生命の関係に関しては、例えば原始地球の大気はどのような状態だったのか、アミノ酸が作られた場所はどこかといったように、盛んに議論が交わされています。

筆者は、現在ELSIが行なっているCreators Meet Scientists (CMS)プロジェクトに触発され、上記で述べたような分子進化のメカニズムを模擬的に表現するために、おもちゃとして販売されている磁石ボールをお湯で柔らかくなる粘土(「おゆまる」)で包み、熱帯魚用の水流ポンプをつけた水槽に投入しました(「おゆまる」は磁石の結合を弱めるために使っています)。水流ポンプは水槽の左側に設置したため、磁石ボールが水槽の左へ流れると、強い水流からエネルギーを得てバラバラになる一方で、右側の比較的水流の弱いところでは、磁力によってボールはお互いに結合します。

もちろん磁石と分子では結合状態に大きな違いがあるため、分子進化の模擬というにはいささか乱暴ではあります。しかし、分子も熱などのエネルギーを得てバラバラになったり、結合により安定な状態になろうとしたりする性質がある、ということを簡単な材料を使ってモデル化し、視覚的に伝えることができたのではないかと考えています。