ELSI

ELSIについて

研究戦略

ELSIの戦略

地球が産声を上げたのは今から46億年も前のことであり、その頃の地球環境を示す直接の証拠は、地上にはほとんど残されていません。このような状況で、私たちは地球生命の誕生の謎を解明することができるのでしょうか。

ELSIは、この課題に、2つの方向から取り組んでいます。1つは、「前方からのアプローチ」で、惑星形成理論と世界最先端の計算機シミュレーション技術を用いて、地球が形成されていく過程を紐解いていきます。そして、得られたデータをもとに高圧高温実験を行い、原始地球の中心核から大気・海洋までの構造を再現します。もう1つ、「後方からのアプローチ」では、本学の地球史資料館にある16万点余の地球史試料を活用し、地質記録が残る38億年前までの環境変動から、それ以前の環境を推定します。また、月や小惑星など初期の太陽系や地球環境の情報が残っている可能性のある場所にも目を向け、総合的に初期地球の環境を明らかにしていきます。

一方、これら初期地球環境の研究を土台に、生命科学分野では生命の誕生に必要な「栄養塩」やエネルギーの供給が可能な「場」を考え、環境の特定を目指します。もう一つ、初期地球の痕跡を残す実地ベースでの研究もいろいろな場所で行っています。多角的な研究を総合的に進めながら、地球生命体の特定につなげていこうというのが、このプロジェクトの一つの大きな着地点です。

さらには、研究の延長線上として、将来的には地球外の生命にも目を向けていきます。木星や土星の衛星、太陽系外で発見されている惑星の中には、生命を育むものがあるかもしれないのです。

地球生命研究所(ELSI)では、生命の起源を探るべく4つの問いを研究の目的としています。

  • (A) どのようにして太陽系で地球は形成されたのか?(地球形成)
  • (B) いつ、どこで、どのように地球生命系は誕生したのか?(地球生命起源)
  • (C) その後、地球生命はどう進化したのか?(初期進化)
  • (D)初期地球生命の研究を通じ生命を育む地球の姿を明らかにしたうえで、系外惑星や月などにおける生命の探索条件を新たに提案し、「生命惑星学」という分野を確立する。(宇宙の生命惑星)

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生命は、地球という環境があってこそ、存在しています。まずは地球の構造を明らかにし(A)、次にそこにどんな生命が、いつ頃誕生したのか(B)、そしてどのように進化していったのか(C)について、いろいろな角度からアプローチします。こうして解き明かされた原始生命体の遺伝情報をもとに、次のステージ(D)では、「どんな環境の変化にも耐え、生き延びていける強い生命」を探っていきます。