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89 大雪の中での一つの共通の目標

毎年恒例のあの時がやってきた。スーパーボウルのこと?それは昔のこと。ワールドカップ?今年は開催なし。散髪に行く時間?確かに。いや、じゃなくて、ELSIワークショップのことだ。メモを取らなかった?出席できなかった?それで、あなたはこのブログ記事を読んでいるわけだ。今回、ワークショップはマサチューセッツ州ケンブリッジの暗い雪の中で行われた。なぜ東京から数千マイル離れたところで行われたのか?なぜなら、このワークショップはハーバード大学Origins of Life InitiativeとELSIの共同出資によるもので、Albert Fahrenbach博士の尽力により実施されたものだからだ。博士は1年のうちある期間をハーバード大学のJack Szostak博士の研究所で過ごし、ある期間を東京のELSIで過ごしている。ハーバード大学Origins of Life Initiativeの目的は、地球や他の惑星の条件が生命とそれに続く進化をもたらした可能性を理解することによって、宇宙に生命が数多く存在するかどうかを明らかにすることだ。 ELSIの研究目標に奇妙なほど近いため、完璧なコラボレーションが実現する。ワークショップでは、起源研究の専門家が過去、現在、そして将来の生命の起源を理解するための研究成果を持ち寄り、議論することができた。ワークショップのタイトル「RNA、ペプチド、小胞、外惑星」からしてもわかるとおり、さらにELSI、ハーバード、東京大学、スクリプス研究所、ノースウェスタン大学、ユニヴァーシティカレッジロンドンの研究者らが参加メンバーであることは、間違いなく多岐にわたる話になることが約束されたワークショップだった。

photo-1.jpgワークショップの内容は極めて興味深く、議論された研究は非常に多様だった。残念ながら、土壇場のキャンセルもいくつかあった。ハーバード大学の学生たちはELSI研究者の成果を聞くのを楽しみにしている。またその逆も然りである。研究者が一緒に集まり、私たちの研究について互いに話し合う機会は1年に2回だけなのだ。参加した出席者は、有機化学から膜生物物理学、惑星科学からリボ酵素進化、非酵素的RNA複製から両親媒性ペプチドの自己組織化まで、あらゆる話題を取り上げた。そのような多様な研究の集まり!これらの分野の多くの専門家ではない私自身にとっても、提示された研究成果は非常に興味深く、理解しやすく、議論されたアイデアの多くはさまざまな分野に適用できるものだった。学際的というにふさわしい。

0305b.jpgボストンに行ったことがない人は、2つの主な注意点がある。ここは東京よりはるかに寒い、そしてたくさんの雪が降る。本当にたくさん。ワークショップの開催時期は、先月だけで積雪が約3メートルあり、冒険家が登れるほどの巨大な雪「山」があった。都会からやってきた人たちには、ボストンは冬の不思議の国のように思えたかもしれないが、ボストンに住んでいる私たちにとっては、冬の拷問だ。地下鉄はまだ正常に運行していなかった。車はまだ完全に埋められていた。多くの歩道が通行できなくなっていた。黒い氷の穴の1つを間違って踏もうものならAmerica's Funniest Home Videosの応募作品になってしまう。本当のボストンを体験したいなら、間違いなく11月から4月までの冬に来るべきだ。私たちはまた、マリオとルイージのような姿をしたハーバードの学士学生が来て、私たちの朝食ペストリーを全部食べてしまったのには大笑いした。本当に面白かったが、それも、残りの食事が何もないことに気付くまでの間だった...。結局、都会から訪問してくれた人たちに本当の「ボストン」と「ハーバード」を経験してもらえた。

総体的に、このワークショップは大成功だった。誰もが素晴らしい研究を発表し、自分自身の研究の方向性および全体の方向性の両方について、興味深く、示唆に富む議論をした。興味を持つ専門分野は異なっているとしても、同じ業種の他の研究所や他の国の研究者とつながることができた。私たちは生命の起源を探求するという同じ目的を持つ学際的な集まりの一員であるが、同時に異なる文化的背景、教育、イデオロギーを持っている。一つの共通の目標を持つことによって、そのような多様な背景を持つ人々が集まり、仕事だけでなく個人的にも互いにつながることができるのは素晴らしいことだと思う。このような共同ワークショップを開催することで、私たちはお互いをよりよく理解し、研究者であること、および人間であることの意味を考えることができると信じている。

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写真提供:Christian Hentrich