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66 日本での1か月

VanceFamelab3_122013.png今回は7月の1ヶ月間、日本に戻った。私はおなじみの杉の香りと、大岡山周辺の狭い通りで響く靴の音で迎えられた。以前の訪問と同様、私はいくつかの新しい言葉を覚えた。Cuteというのはここではいろいろな事に使える。ka-wa-i-i(Hawaiiに似た発音)は、ひらがなでは「かわいい」、漢字では「可愛い」と書く。

この旅の期間中、2つの会議があった。奈良の「Origins」会議と札幌の「Asia Oceania Geosciences Society Meeting」だ。私の婚約者Saraは私の長い旅の最初の部分だけ一緒に行動し、一緒に奈良の「Origins」会議に出席した。

私は土星の衛星であるタイタンの深海についての講演を30分間行い、惑星や系外惑星の深海には塩が存在し、水と岩石の相互作用を促し、生命に必要な食料を供給しているかもしれないと伝えた。私はここ数年、深海の「天気」が非常に奇妙な動きをすることを示す、私の「ビックマック」海洋モデルに注目している。将来のミッションはその天気の兆候を知ることになるだろう。ただし、今のところ、それらの特性を正確にシミュレートできるようになるには、実験室での多くの確認作業が必要である。 さらに「ビックマック」が実際に起こるかどうかをテストし、上向きの氷雪や下向きの塩雪といった、その他の奇妙な現象を解明するため、コンピュータを使った多くの計算が必要である。

奈良では、会合のポスターセッションでエウロパ・クリッパーミッションのコンセプトの概要を説明した。活発な地質活動と、エンケラドスに似たプルームの可能性が発見され、エウロパ科学に参加し、ここでのミッションを研究するチームの一員になれたことで多くの刺激を受けている。

Originsミーティングには、生命の起源について情熱を持った多様な人が集まっていた。私が興味を持った活発な議論を少しだけ紹介すると、生命の定義、研究室で生命を創る試み、我々の最初の祖先は火星が起源で隕石によって地球へ運ばれてきたという説、最初に地球外生物を発見するのは太陽系内かそれとも別の星かなどがあった。

会議のセッションの合間に、Saraと私は古い寺院を訪問し、奈良のいたるところにいる鹿(とても「可愛い」)を見学した。奈良の観光客は鹿に食べ物をあげるように勧められているので、鹿も集まってきて人々に興味を示す。私たちは大きくて華やかな仏像を訪れ、会議のオープニングセレモニーの一環として、短い能の舞台を楽しんだ。

会議の後の短すぎる週末、私たちは京都を楽しんだ。Piet Hutと彼の妻と素敵な夕食をとり、哲学の道を散歩しながら銀閣寺まで行った。日曜日の夜、Saraと私は東京に戻り、大井町駅のアワーズイン阪急に宿泊した。そして彼女に別れを告げ、残りの時間を滞在することになる大岡山のインターナショナルハウスに移った。

ELSIに滞在した2週間、昼夜を問わず、信じられないほど多様な活動とトピックが目白押しだった。私は毎年恒例の「Site Visit」に参加し、ELSIの進捗状況と長期的な計画について学んだ(Kurumaさんのブログ記事で紹介されている。私は写真の左側にひざまずく紫色のシャツの男だ)。宇宙探査において最も重要な質問―「我々には仲間がいるのか?」―に答えられる特別な組織として、私はELSIがJAXAとの連携を深めることを奨励されたことを嬉しく思った。

夕方には、たいていレストランや日本のタパスバー(i-za-ka-ya、いざかや、居酒屋)でELSIの科学者やスタッフとの会話を楽しんだ。同僚と深夜まで飲んでいるにもかかわらず、午前7時前に目を覚まし、JPLの学生インターンと会った。私には5人の優秀なインターンがいる。エウロパの海を理解する方法を様々な観点で(塩がどのようなものであるか、海面氷の物質から海洋を理解する方法、そして海洋が生命を支えているかどうかなどを)研究している。

午前のミーティングの後、私は通りを横切りELSIに向かって歩いた。時には共用のゲストオフィスにて1人で仕事をすることもあったが、AGORA(共用コミュニケーションスペース)や畳部屋でのディスカッションに頻繁に参加した。世界レベルの数学者と物理学者が、自然システムがどのように(生命と同じように)自己組織化するための情報を作り出すのかを研究するModeling of the Origin of Life(MOL)ワークショップ当初からELSIにいたことはラッキーだった。熱力学と生命について考える者としても、(ただし通常はもっと単純な水と岩石の化学について考えている者としても、)ワークショップでの会話は刺激的であった。

JPLの仕事を継続し、生命誕生の議論に参加する中で、ELSIで星や惑星、そして地球を研究している一流の科学者との共同研究も行った。 ELSIでの夢のような文化と科学の融合を鮮明に感じたのは最終日だった。私は一緒に研究していたマグマオーシャンダイナミクスについて話をしようとMatthieu Laneuvilleを探していたが、代わりに日本語のレッスンに参加することになってしまった。彼とは生命の起源についてミーティングをする約束をしていたので、私は時間が気がかりだったが、どういうわけかすべてうまく事が運んだ。それだけではない。その日は、ELSIタウンホールミーティングにも参加し、夕方には氷惑星の海洋循環と熱輸送についての白熱した議論にも参加した。

今、私は札幌でこの記事を書いている。AOGSミーティングに参加しているところだ。私は月曜日にエウロパについて、昨日はポスターについて講演した。 ELSIと同様、天文学、惑星、地球科学のトピックについての刺激的なプレゼンテーションを楽しんでいる。何千人もの人々が一堂に会する場所では刺激的な議論をするのは簡単だ。素晴らしいことにELSIは、はるかに小規模なグループながら同じようなことが達成できる。