5月は日本では特にたいしたことは起こらない。花見シーズンに満開の花の写真を撮り終え、暑くてじめじめする夏の到来に備えている時期なのだ。これはある意味冗談だが、5月の静けさには意味がある。人々は4月になると新しい学校や新年度のため高速ギヤに切り替えるが、5月になるとゆっくりと生活のリズムを作り、一息つく。私は1月に何度か面接をして、ELSIに5月から参加した。そう、「何度か面接をする」ところを私は強調したい。ELSIが採用候補者を検討する方法は独特で、大勢の人に会うのだが、自分は評価されているのか、それとも科学的な意見交換をしているのかよくわからないのだ。またはどちらもなのだろう。通常とは違う方法だったが、うれしいことに、私にはうまく働いたようだ。
その間、私は誰といっしょに働くのかという情報を聞き出すことができた。インスタントヌードルエキスパート(INE)と働くことができてラッキーだと思った。INEとは、すぐに提案やアイデアをくれる人たちのことをさす。私の同僚は1年間ずっとここにいるわけではないが、それでも滞在中は、一緒にいると刺激を受ける。何度か会話を交わすうちに、自分がどれだけ書物を読まなければならないか、何をしなければならないか、どれだけ研究の手順を減らせるかに気付かせられる。これが、私がここにきて1週間で学んだことだ。
私はまた、ここでのコラボレーションの様子に感銘を受けた。分野が相互に関連しあっているため、より大きな姿を見ることができる。若い科学者はテーマを掘り下げることを好み、全体像を無視する傾向にある。 ELSIでは、より大きな姿が話題になることが多く、ここからコラボレーションが始まる。当初は難しく感じるが、一度やってみると刺激的である。
現在、私は化学実験室を作るための手伝いをしている。実験室はほとんど「マンション」状態になっている。(日本では「スタジオアパート」のことを普通に「ワンルームマンション」というが、これは未だに理解するのが難しい日本語の言葉の一つだ。)しかし、ELSIは来年末までに新しい建物を建設する予定であり、利用できるスペースが変わる。今のところ、私たちは管理しやすい、ベストな空間を作る取り組みをしている。私自身は、わくわくしながら実験室の構築に関わっており、小さい部屋で器具や材料をどう運ぶかというアイデアを、皆で出し合っている。夏の終わりまでに完全に運用できることを願っている。
話題を変えると、ここで良いと思ったこと、そして白状するとちょっと変だと思ったことは、ELSの人が家族のようだということだ。私たちはよく一緒に昼食をとり、3時に毎日のティータイムで会い、毎週金曜日に一緒に飲む。読者は、おそらく私たちは友達が少ないのだろうと思っていることだろう。しかし、友達がいてもいなくても、最高の議論がここで行われていることは間違いない。ここでは研究スタッフの何人かと知り合いになり、友人関係を築いていった。私たちはワールドカップの試合を一緒に観る予定だ。私は一般的には仕事と生活を一緒にしない方が良いと言うのだが、ELSIは例外なのだろう。
最後に、私はELSIの素晴らしいサポートスタッフに感謝の意を表したい。彼らは初日から私の登録やその他の役所仕事を驚くほどスムーズにやってくれた。さらに、オフィスで彼らに話しかけると、いつも歓迎してくれる。彼らはつっこんだ(ナイスな)質問をしてきっかけを作ってくれ、友人になり、円滑にコミュニケーションがとれるようにしてくれる。
全てのことが順調だ。ELSIの家族としてワールドカップの試合を一緒に見ているときに、友達が戦っている相手チームの国の出身だということがわかるまでは!