日本時間7月20日6:27~6:42、あなたは何をしているでしょうか? ほとんどの人はこの15分間をいつも通りに過ごすかもしれません、が、地球にとっては特別な15分となるのです。この時間、はるか遠く10億キロメートル以上離れたところで、NASAのCassini(カッシーニ)という宇宙探査機が地球の写真を撮ります。一般的な写真ではありません。なぜなら、ものすごく遠くから撮影するため、地球全体が1ピクセルに(正確に言うと1ピクセルの一部に)収まるほどです。Cassiniが土星の影に入るため、太陽光に遮られることなく安全に地球の写真を撮ることができるという、またとない特別な出来事なのです。
残念ながら日本はこの時間帯に土星の方向を向いていないため、「土星に手を振る」ことができません。しかし地球の住民として、私はこのイベントに神妙な気持ちになります。このめったにないイベントを祝うため、いくつかのプロジェクトも計画されています。
http://thedaytheearthsmiled.com/info.php#projects
太陽系の外側から地球を見るのは、これが3度目です。最初の画像はNASAのVoyager1宇宙探査機が撮影したもので60億キロ離れていました。この映像に感銘をうけ、Carl Sagan(カール・セーガン)が有名な言葉「ペイル・ブルー・ドット(青い点)」を残したといいます。2度目の写真は2006年Cassini(カッシーニ)によって撮影されました。
どの映像でも、日常では考えられないスケールで「私たちの世界」を垣間見ることができます。仕その時人々は仕事で忙しいかもしれないし、笑っているかもしれないし、誰かや何かと格闘しているかもしれません。でも私たちは太陽系の中の小さな場所で孤独に生きているのです。得意になっている私たちですが、宇宙の誰が、我々の存在を想像しているというのでしょう?宇宙からの写真を見ていると、私たちが日常経験することや、太陽系についての書物から習うことをはるかに超えた、超絶した世界を想像させられます。
何十億キロも離れたところから地球を見ると、一つの疑問が浮かんできます。生命の存在と生命を維持するための豊かな自然を持つ地球の双子(天文学的に離れた距離に存在する地球にそっくりな天体)はあるのでしょうか? 現在このような問いは積極的になされ、惑星重力による主星のふらつきの様子、惑星のトランジットによる星の光の定期的な減衰、あるいは惑星による極めて微小な重力の異常などが、地球サイズの太陽系外惑星が多く存在していることをほのめかしています。
将来、居住可能な太陽系外惑星のさらなる情報を得るため、惑星の姿を直接撮像で得ることができるようになるでしょう。最近では、地球サイズの惑星の直接撮像の技術を開発中で、世界中でプロジェクトが進行中です。例えば、筆者自身も参画する日本のグループからは、コロナグラフ装置と30メートルの望遠鏡が計画中です(プロジェクト責任者はTaro Matsuo教授)。
太陽系外惑星の将来の画像の基準として、点としての地球の特長が10年来の研究対象となっています。原則的に、色、スペクトラム、およびそれらの時間変化によって大気組成、自転率、表面組成などの表層環境がわかり、居住可能な惑星かどうかのヒントを与えてくれるのです。地球の特長には酸素、その光化学産物としてのオゾン、そして我々の植物に特有のスペクトラムがあり、これらの特長は「居住可能な世界」を探求する今後の調査において役立つと考えられています。
さらに、惑星の自転(と公転)による平均的な色がどう変化するかを観察することで、物質の色の特長(雲は白、大陸は茶色、海は深い青など)をもとにした地球の地図を作れるかもしれません。私は協力研究者とともに、時系列でみた地球の色を使って、大陸/雲/雪/植物の分布を復元しました。
このように、「ペイル・ドット」の観察から地球の複雑な性質のどの特徴を見て取れるのかがわかります。地球の「ペイル・ブルー・ドット」に豊かな生命が存在するのと同様に、画像の微小なピクセルが我々の惑星について語ると同時に、他の惑星に存在する生命探索のヒントとなる豊富な情報を与えてくれます。太陽系と太陽系外システムの生命を探求するため、遠くから観察を行うことはELSIの研究課題のひとつです。